
FXをやっていると雇用統計って言葉をよく聞くんですけど、それはいったい・・・?



雇用統計とは、各国の経済指標の中でも最も重要度が高い指標です。中でもアメリカの雇用統計は為替に大きな影響を与えるので必ず覚えておきましょう!
- 雇用統計とは?
- アメリカの雇用統計が注目される理由とは?
- 雇用統計の中でも何に注目すればいいか?
- トレードではどのように活かすのか
雇用統計とは
雇用統計は為替相場だけでなく、金融市場全体が動くともいわれている毎月恒例の重要な経済指標です。
景気の動向を示す遅行指標(景気の動向よりもやや遅れて反映される指標)の位置付け。
働いている人の統計のことで、毎回多くの数字が発表されている。市場予想が外れることも多く、サプライズが起こりやすい。
〜雇用の状況でわかること・影響を及ぼすこと〜
- 企業の景況感
- 個人消費に影響
- 金利を変更すべきかどうかという金融政策に影響
なぜ遅行指標なのか?



雇用統計はなぜ少し遅れて反映されるんでしょうか?
それを説明するためには「経済成長のしくみ」を解説します。
〜経済が成長する過程〜
企業の資金が潤う → 資金を使ったり、融資を受けたりして設備投資をする → 従業員を増やす → 生産力が高まる!



雇用が高まるのは経済成長のおかげで、雇用統計が上向くといことは「経済の本格的な復興を遂げる!」と確認できるわけです。



なるほど。経済が成長することではじめて雇用が上向くから、景気動向の遅行指標というわけなんですね!
そして、雇用統計の中でも特にアメリカの発表は世界から注目されています。
米雇用統計


アメリカの雇用情勢を示す統計。
- 発表機関:米労働省労働統計局(BLS)
- 発表日:原則毎月第一金曜日(夏時間:日本時間21:30、冬時間:日本時間22:30)
- 注目:失業率、非農業部門雇用者数(NFP)を中心に平均時給、週労働時間など計10数項目の指標が発表
失業率・非農業部門雇用者数、平均時給など、これら3つの「予想値」と「発表値」のギャップが大きいほど為替に大きな影響を与えます。
米雇用統計はこの2つに注目!!
米雇用統計で特に注目されるのがこの2つ。
- 非農業部門雇用者数
- 失業率
① 非農業部門雇用者数(NFP)
民間企業や政府機関に雇用されている人の数。農業従事者・経営者・自営業者は除外。事業者の給与支払いをもとに集計。対象事業所は40万社、従業員4700万人。
特徴は以下の通り。
- 前月比での雇用者数の変化が重要(事前予想値の結果の値が大きく乖離することもある)
- 景気後退 → 雇用者数減
- 不景気の終わり、もしくはその少し後に回復しやすい
この非農業部門雇用者数も、いっときはコロナショックではマイナス750万人になってしまいましたが、6月にはプラス480万人に増加しました。



改善した理由は、コロナの感染封じこめのために抑制されていた経済活動が限定的ながらも再開されたからです。(2020.3月、4月の話)
なかでも、レジャー・接客業・建設業・教育・保健サービス・小売業などの景気に直結するような商売は大幅に増加しました。
② 失業率
労働人口(16歳以上の働く意志をもつ人たち)のうち、失業率の割合を示す指標。
失業者と就業者の合計を割ったもの。前回発表時の数値と比較・推移をみる。家計調査。調査対象は約6万世帯。
- 失業率の上昇 → 経済後退 → ドル安要因
- 失業率の低下 → 経済回復 → ドル高要因
失業率は前回の数値を上回るか下回るかというところに注目が集まります。(ただし、遅行指標のため、非農業部門雇用者が改善された翌月には失業率が下がることもあるので注意が必要です!)



ちなみに、2020年4月はコロナの影響で、失業率は14.7%になりました。



14.7%!?・・・・ってすごく悪いんですか?



この数値は1930年代の世界恐慌以降で最悪の水準です!
ですが、6月には11.1%と改善しつつあります。
なぜ米雇用統計が重要視されるのか?



なんでアメリカの雇用統計はそんなにも注目されているんですか?



アメリカが世界最大のGDPであること、また、雇用統計のデータはFRBの参考指標のひとつにもなっているからなんですよ。
アメリカの中央銀行であるFRBは、政策金利の引き上げ・引き下げを検討するときに労働市場の動きを把握する上で雇用統計のデータを参考にしています。
アメリカの国内総生産(GDP)は世界1位で、その約7割が個人消費で占められています。そしてアメリカの経済が良くなるか、悪くなるかは個人消費が増えるか減るかにかかっています。
このことから個人の雇用情勢を表す米国雇用統計はその動向を見る上で重要な指標であると言われています。
雇用統計が改善 → 賃金が上昇、個人消費の増加に期待
雇用統計が悪化 → 賃金が低下、個人消費の減少が懸念



こうしたことから雇用統計のデータを把握することは経済全体をとらえるうえで重要というわけです。
他にもアメリカの企業は日本の企業とは比べものにならないくらい雇用を変動させます。アメリカはリストラやレイオフ(一時解雇)なども会社の必要に応じて即座に実施されます。
このようにアメリカの雇用統計に出る数字はタイムリーであり、景気を表すものとしてマーケットに大きな影響を与えるわけです。
雇用統計発表では「サプライズ」や「織り込み済み」に注意!
一般的に非農業部門就業者数の方がサンプル数が多く、景気の動きに一致するために短期的に重視されますが、翌月には大幅修正されることも多く、中長期的に見る場合には修正の少ない失業率が重視されることもあります。
発表当日は雇用統計の発表時刻に向けてドル買いやドル売りが出ることがあるため、取引が控えられている東京時間からロンドン時間にかけてボックス相場になることがあります。
また、雇用統計発表前には各社で「前回値」「予想値」「結果」が発表されます。注目すべきは「予想値」と「結果」の乖離です!
非農業部門雇用者数に変化は発表数値から大きく乖離することがあると発表直後に為替レートが大きく動く傾向があるのです。



予想値は約2週間前〜10日前くらいに発表されます。雇用統計の場合は大手金融機関の予想中央値となります。
例えば、非農業部門雇用者数が15万人増加と予想している銀行と30万人増加と予想している銀行があれば予想は15万人の増加となるわけです。
予想値が前回値よりもいいものであると、投資家はその結果で「織り込み」買いにいこうとします。



なぜ「織り込み買い」となるんですか?



いい結果が出る可能性が高いのであれば、安いあいだに買っておいた方が収益を上げやすいからですね!
そのため、実際にいい結果が出たとしてもすでに市場では「織り込み済み」すなわち結果が予想できている状態であり、すぐに利益確定売りが出てしまい、発表後に相場が下がることもあります。
逆に予想よりもとんでもなくいい結果が出たら、市場は「織り込めていない」ためにさらに上昇することもあります。(これをポジティブサプライズといいます)
この逆の場合は、ネガティブサプライズといいます。これは予想値よりも悪い結果が出た場合のことをいい、それまで買っていた投資家や多くの市場参加者が一斉に売り始めることで相場は一気に下落します。
ドルや株価がどのような動きをするか、以下にまとめました。
- 事前予想通り(織り込み済み)の結果 → 相場はあまり変動しない
- 予想以上の結果(ポジティブサプライズ) → 株価上昇 → ドル買い
- 予想を下回る(ネガティブサプライズ) → 株価下落 → ドル売り
雇用統計で意識されていることのまとめ
では、ここまで説明してきた景気動向について以下の表にまとめましたので復習です。
雇用統計 | 改善 | 悪化 |
個人所得 | 個人消費増加→賃金上昇 | 個人消費現象→賃金低下 |
景気 | 改善 | 悪化 |
インフレ率 | 上昇 | 低下 |
FRB金融政策 | 金利引き上げ | 金利引き下げ |
ドル相場 | ドル買い | ドル売り |



基本的には上記の表のかたちで景気が動いていきます。
この経済成長を予想していく上で雇用統計は必要不可欠な指標なのです。
雇用統計は予想値や結果などの数値が大きく変わることもあり、1日を通して相場が乱高下するため、非常に予想しにくいです。
発表の際に上昇するのか、下落するのかはプロの投資家であってもわかりません。
しかし、この雇用統計前に発表される2つの先行指標をもとにおおかたの予想をすることが可能です!
こちらの記事で解説しているので、参考にしてみてください>>ADP雇用統計・新規失業申請件数は米雇用統計を予想できる先行指標!


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