2020年4月20日、コロナの影響と協調減産も不発に終わりニューヨーク原油先物市場で史上初!原油価格マイナス!となってしまいました・・。世界がざわついた経済ニュースのひとつです。

マイナス!?それは大変!・・って、それって大変なことなんですか?



これは一大ニュースなんですよ!ちなみに2019年〜2020年の年初にかけて1バレル50〜60ドルで原油は取引されていました。原油価格のマイナスは史上はじめてのことです。
- 原油価格が為替にどう影響するのか?
- 原油価格はどのようにして決まるのか?
- なぜコロナで原油価格は暴落したのか?
- 協調減産とはなにか?
これらについてコロナショックを題材にして解説していきたいと思います。
そもそも原油ってなに?という方はこちらの記事を参照してください▼


コロナショックでNY原油価格が前代未聞のマイナスに!協調減産は不発。


- コロナの感染拡大により経済活動の停滞 → 原油の需要減少(30%ほど減少)
- OPECプラスの協調減産決裂による供給過多
- 原油貯蔵力が限界に
それぞれ解説していきましょう。
①コロナにより経済活動が停滞し、原油の需要が減少した
コロナの感染を広げないために世界中で航空機減便、工場の生産を停止しました。これらの業種は原油を使うので、減便や生産の停止により原油の需要は大きく減ってしまいました。
②OPECプラスの協調減産決裂により供給過多になる



協調減産は、「原油価格が下がるのを防ぐために産油国が協力し、原油の産出量を減らすこと」ということでしたよね!
〜OPECとロシアの協調減産の歴史〜
2017年に原油よりも生産コストの高い米国のシェールオイルの登場により、OPECなどの産油国とロシアはシェールオイルに対抗するために、原油価格を引き下げて原油の産出量を増やしました(協調減産)。
しかし、原油の収入に頼っている産油国は原油価格の下落で収入が減ってしまい、自分で自分の首を絞める結果となってしまいました。
そこから、産油国どうしが協力して原油の産出量を減らし、原油価格を高く維持するようになりました。
今までは、産油国どうしで協調減産が維持されていたのですが、2020年3月上旬にOPECとロシア(非加盟産油国)などとの減産強化の交渉が決裂してしまったのです。しかし、4月初旬には再び協調減産されることとなりました。



なんか協調減産でもめている感じですね。
どうしてこのようなことが起こってしまったのか?時系列に解説していきます。
3月6日 ロシアが協調減産の受け入れ拒否
OPECプラスは2017年1月以降、原油市場でのシェア争いをやめ、価格の下支えを目的とした協調減産を行なってきました。
2018年10月〜2020年3月末までは、基準として日量170万バレルの減産を実施し、さらにはサウジアラビアは自主的に40万バレルの減産も続けていました。
2020年3月5日の臨時総会でOPECは150万バレルの追加減産と12月末までの減産を続ける案に合意しました。しかし、3月6日にロシアがこれを拒否したことで2017年から続いた協調減産が決裂してしまいました。
こうして3月9日に原油価格が一気に30%以上も下落し、WTIは一時1バレル30ドルを切りました。
- OPECとの生産調整に不満
- 減産を続ければ、米国のシェール企業に石油市場でシェアを奪われると懸念
4月10日 OPECとロシアなどの非加盟産油国が協調減産を発表
OPECプラスが減産を発表しました。
理由としては、コロナによる感染拡大で需要の減少が起こり、「原油の増産」と「需要の減少」でどんどん原油価格が下がり、産油国の経済が厳しくなるために減産に踏み切ったと考えられます。
そして、1000万バレルの減産を発表していましたが、メキシコが減産額の受け入れを渋り、30万バレル減産額を小さくして合意しました。それでも日量970万バレルという過去最大の協調減産となりました。



この減産の発表をきっかけに大幅な協調減産になると期待され、原油先物が買われました。(一時は28ドルまで上昇)
4月12日 原油生産を最大日量970万バレルの協調減産に最終合意
OPECとロシアなどの非産油加盟国が原油生産を最大日量970万バレルの協調減産に最終合意しました。
これで原油価格の下落は止まるかと思われていましたが・・・。
4月21日 原油価格が史上初のマイナスに
協調減産を繰り返すも、恐れていたことが起きてしまいました・・。
4月21日に5月物のWTI原油価格が1バレル=マイナス37.63ドルとなってしまったのです。そして、一時はマイナス40.32ドルまで下げる場面がありました。
- WTI価格:NYマーカンタイル取引所で上場されている先物商品。取引量・取引の参加者が多く、世界の投資家が注目している原油の指標。
- 5月物:5月にアメリカのオクラホマ州カッシングというところで原油を受け取ることができる権利
先物商品は、買った後に売るとその差額が利益もしくは損失となり、ほとんどの投資家は実際に現物の受渡をせずに、取引期限の間に決済することになります。
逆に決済をせずに期日を迎えてしまうと現物の受渡をする必要がでてきます。
今回、マイナス価格(売り手がお金を払って原油を買い手に引き取ってもらうこと)になったのは「決済できなければ、現物を受渡しなければいけない」という後者の状況になってしまったために起きました。
5月物の先物の最終取引日が4月21日だったために、ほとんどの人が原油を渡されても困るので、20日のうちにポジションを決済する必要があったというわけです。



この短期間にこんなことが起きていたんですね!



協調減産でも原油価格の暴落は止められませんでした・・・。
③原油貯蔵力が限界に
原油の需要の減少で原油の貯蔵庫がほぼ満タンになり保管できない自体に陥りました。
これも原油価格が暴落した要因です。
また、原油は貯蔵できないからといって勝手に捨てたり、燃やしたりすることはできません。そして、原油は保管するのにも膨大な保管料が取られてしまいます。
そのため原油の買いポジションを持っている人は、何がなんでも売らなければいけないという状態に追い込まれてしまうのです。



これら①〜③の原因により原油価格の急落が引き起こされたのです。



なるほど!これが「原油をお金を出してでも買ってもらう」(原油価格のマイナス)に繋がったんですね!
原油価格暴落後はどうなっていくのか?


原油価格は暴落後、短期的に見て上値は重く、先物の取引期日が近づくとまた落ちやすくなると予想されます。
原油の需要に関しては、コロナ問題が終息し、工場や航空機、自動車業界などこれらの経済活動が再開することが必要。
↓
各国、経済活動再開を目指してるが段階的にできない。また、国際的な人の往来も当分は難しい。
↓
これらのことから原油価格が大きく上昇することは考えにくい。
また、中期的に見て突発的な事態が起これば急騰することも考えられます。
〜中期的なリスク〜
- ポジティブな材料:治療薬・ワクチンの開発で再開期待が大幅に強まる
- ネガティブな材料:中等などでの紛争リスク
治療薬などが再開されれば、世界経済は再開し当然原油需要も戻すのでポジティブ材料となります。
しかし、どこかのタイミングで紛争リスクが大きく高まるというネガティブ材料も起こるのではないかとも考えられます。
理由としては、産油国は米国、ロシア、中東諸国などの国で、これらの国にとっては原油価格が下がるのは不利益となります。そして、需要の回復が見込めないと戦争リスクで上げるしかないということも起こってしまうのです。



戦争はよくも悪くもお金が流れる景気対策なのです。



世界中で大きな不満が高まっている中で、不満の矛先を外国に向けるという歴史は今までなんども繰り返されてきましたね。
このまま経済が立ち直らず、原油価格が下落した状態が続けば戦争リスクは意識しなければならない事態というわけです。
原油価格が為替に与える影響とは


原油価格は需要と供給で価格が決まります。
- 需要:好況 → 増加、不況 → 減少
- 供給:各国が対立し増やせば増加。協調減産で減少。産油国で紛争が起これば減少。
このように「好況・協調減産で上昇」「不況・減産の不成立、紛争で下落」といった、リスクオンでは上がり、リスクオフでは売られるというものです。
新興国通貨は基本的に同じような動きをすることが多いです。新興国通貨の中でもメキシコペソのような産油国通貨は特に原油との流動性が高いです。
このようなことから、新興国通貨は短期的には原油と同じで上値が重い展開が続くと考えられます。
中期的な目線、原油で言えば、ポジティブ・ネガティブにしろ、年内急騰の可能性は高いと考えます。
また、新興国通貨はポジティブ材料のコロナ対策がうまくいけば強気になる一方、ネガティブ材料での急騰や、紛争などでリスクオフからの下落という要因となり、強気姿勢ではいられないと思います。
原油の暴落局面で新興国通貨で取引をする際は、以下のような取引が良いのではないかと考えられます。
- 短期での戻り売り
- 急騰したときに買い、短期の反発を狙う
- 下がったところを買う
原油は景気の影響をもろに受けます!|まとめ


今回のポイントをまとめると
〜原油価格暴落の要因〜
- コロナの感染拡大により経済活動の停滞
- OPECプラスの協調減産決裂による供給過多
- 原油貯蔵力が限界に
〜原油価格のその後〜
原油価格は短期的に見て上値は重く、先物の取引期日が近づくとまた落ちやすくなると予想される。



・・・なんとなくわかりました!



なんとなくか・・・!原油は一朝一夕で理解できるものではありません。何回も読み直したり他の書籍も参考にしてみてください。
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