相場は人と人との騙し合いです。とくにFXはマイナスサムゲームなので、自分が負けてる裏では誰かが勝ち、投資家が損した分が業者の利益になるので、投資家全部の損益を集計するとマイナスになるようになってます。
ここで紹介する投資家心理を知っていれば、チャートを読み解く際に大衆心理と逆に動くことができ、勝者の側に回ることができます。また、「メンタル」のコンディショニングも役立つので、相場が荒れたときには冷静に立ち回ることもできるようになるでしょう。

投資で失敗しないために知っておきたい「投資心理」と「対処方法」をご紹介します。
FXで無意識にかかっている投資家心理6つと克服する方法
FXチャート分析でハマりやすい投資家心理は以下の6つ。
- プロスペクト理論
- アンカリング効果
- 確証バイアス
- バンドワゴン効果
- フォン・レストルフ効果
- サンクコストバイアス
これは認知バイアスともいわれ、潜在意識の問題なのでなかなか脱却するのは難しいですが、常に意識して、成功体験を積むことで徐々に認知バイアスから脱却することができます。
① プロスペクト理論
プロスペクト理論は、心理学者のダニエル・カーネマンとエイベル・トベルスキーの二人によって提唱されました。
これは行動経済学の一種で、
人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(損失回避性)がある。
つまり、人間は自分に不利な選択をしてしまうように脳にプログラムされているのです。恐ろしい・・・。
実際にプロスペクト理論を体感できる有名な問題がこちら▼
- 質問1:あなたに、以下の二つの選択肢が提示されたらどちらを選びますか?
選択肢A:50万円が無条件で手に入る。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら100万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。 -
質問1は、どちらの選択肢も手に入る金額の期待値は50万円と同額ですが、堅実性の高い「選択肢A」を選ぶ人の方が圧倒的に多いとされてます。
- 質問2:あなたは100万円の負債を抱えています。そのとき、同様に以下の二つの選択肢が提示されたらどちらを選びますか?
選択肢A:無条件で負債が50万円減額され、負債総額が50万円となる。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない。 -
質問2も両者の期待値は-50万円と同額です。通常であれば、質問1で「選択肢A」を選んだ人は、質問2でも堅実的な「選択肢A」を選ぶだろうと推測されます。しかし、質問1で「選択肢A」を選んだほぼすべての人が、質問2ではギャンブル性の高い「選択肢B」を選ぶことが実証されています。
つまり相場において人間は
含み益を前にすれば、確実に利益を取りにいき(早期利食い)、含み損を前にすれば、塩漬けして戻ってくるのを待つ
という行動をとると判明しています。これが「損大利小」になってしまう原因ですね。
プロスペクト理論の克服方法
これは人間の本質的な部分なので、完全に防ぐことは不可能だと思います。
しかし、この罠にハマる回数を減らすことは可能だと思います。その方法をお教えしますね。
① ルールを明確化する:マイルールはシンプルにした方が守りやすくなります。例えば、移動平均線とローソク足だけで稼いでいる人はけっこういます。
② 負けが続いたらチャートから離れる:負けが続くと心理的に追い込まれて大衆心理を見失ってしまいます。こうなるとプロスペクト理論のほかにもいろいろな心理的な落とし穴にハマっている可能性があります。冷静になるにはチャートから離れるしかないです。
② アンカリング効果
アンカリングとは、船を止めるための錨(いかり=アンカー)を下ろし船が動かないよう固定することです。人間の行動もこれと似たことがおこります。
ドル円が110円まで上昇すると予想して100円のところで買う(アンカーを下ろす)→ しかし、90円まで下落 →「ここが底だ!絶対に戻ってくる!」と最初の予想を変えることができない。
アンカリング効果の克服方法
アンカリングの呪縛から解き放たれるためにはズバリ、予想をしないことです。
「じゃあどうやってトレードするんだー!!」ってなりますよね。それに対する私の回答は、
「〜かな?」でエントリーする。です。つまり、
「上がるかな?」で買って「上がった!」で売る。
「下がるかな?」で売って「下がった!」で買う。
これを常に意識してトレードをするようにします。
また、相場の情報収集をする際には、TwitterやYoutube、ブログを参考にしますが、あまり情報を拾いすぎると「ドル円は上昇する!」とアンカーを下ろしてしまう事になりかねないので、上昇するという予想を見たら、反対に下落するシナリオを立ててみることで、この呪縛から逃れやすくなります。
私が相場の予想をするときは上記のことを意識するように心がけています。
③ 確証バイアス
確証バイアスとは「自分に都合の良い情報ばかり集めて、都合の悪い情報は無視する」という、なんとも都合のいい心理的な作用のことです。
買い建玉を持っている状態で相場の予想記事を読む→上昇を予想する記事だけ目にとまり、下落を予想する記事は目に入らない or 読んでも記憶に残らない。
確証バイアスの克服方法
確証バイアスを克服するには、トレード仲間をつくって意見交換をするのが良いです。今はいろいろなコミュニティがあるので、どれかひとつに参加してみるのも良いかもしれません。
ポイントは自分に同調する人ではなく、自分とは異なる考え方や意見を持つ人と意見交換をすることです。自分の意見だけで決めるよりも、より大きな視野でトレードの決断を下すことができ、現実的に正しい判断を下せる確率が高くなります。
④ バンドワゴン効果(ハーディング現象)
バンドワゴン効果とはハーヴェイ・ライベンシュタイン(Harvey Leibenstein)というアメリカの経済学者が提示した行動心理学です。


このデイトレードという書籍の中で紹介されている、ものすごく重要な概念です。簡単に言うと、「盛り上がれば盛り上がるほど、どんどん人が集まってくる」心理的作用のことです。
「みんながしてるから自分もしよう」って思ったことないですか?日本人には特に多いかもしれません。
FXにおいては、「強い上昇トレンドが発生したから飛び乗ったらそこが天底だった・・・。」というよくあるやつ。
バブル相場やビットコインの急上昇などはこのバンドワゴン効果でつくられています。
バンドワゴン効果の克服方法
とにかく飛び乗りは禁止です。トレンドを確認したら、一旦冷静になりそのトレンドの強さやどこまで伸びそうかを判断し、押し目を待ってからエントリーするのが良いかもしれません。とくに5分足、15分足などの短期足ではトレンド転換しやすいので注意です。
⑤ フォン・レストルフ効果
フォン・レストルフ効果(孤立効果)は、ドイツの精神学者であるヘドウィグ・フォン・レストルフが提示した行動心理学で、「他とは明らかに違うものは人の記憶に残りやすい」という心理的効果です。
マイルールと違った取引をして偶然利益をだしたり、過去の経済指標発表後の大きな値動きが記憶に残り、FXのチャート分析やトレードに無意識に影響を及ぼす。
具体的に例を出すと、
例)
「前回の米雇用統計の発表後に大きく動いたから今回も大きく動きそうだな(根拠なし)」
「けっこう含み損膨らんじゃったけど、前回は待ってたら戻ってきたし今回も大丈夫だろう(思考停止)」
はい、めちゃくちゃ危険ですね。でも油断するとやっちゃいます。
フォン・レストルフ効果の克服方法
基本的に、フォン・レストルフ効果を改善するにはマイルールを徹底して守るか、自動売買などで感情を抜きにしてエントリーしていく必要があります。
「そんなこと言っても、マイルールも定まってないし、自動売買ソフトなんてもってないよ!」という人も多いと思います。
そんな人に有効な手段が、チャートを見る時間を減らすことです。5分足、15分足などの短期足でトレードをしている人は、4時間足、日足などの長期足でのトレードに変えることをおすすめします。
4時間足ならば1日に6本しかローソク足は更新されないので必然的にチャートを見る時間は減ります。
フォン・レストルフ効果の罠にハマってしまう人は「チャートを眺めている時間が長くて余計な事を考えてしまう」傾向にあるようなので、長期足のトレードがおすすめです。
⑥ サンクコストバイアス(コンコルド効果)
サンクコストバイアスとは、ある対象へすでにお金や時間を費やしてしまった事から、このまま投資をすると損すると分かっていながら止めることができない心理。もったいない精神ですね。
コンコルドの開発が有名な例として挙げられており、コンコルド効果ともいわれています。
相場の分析にかけた時間や費用を無駄にしたくないという思いから、損切りできずに含み損がどんどん増えてしまう。
これは誰もが経験をしたことがあると思うので想像しやすいと思います。
サンクコストバイアスの克服方法
エントリーするのと同時に損切り注文と利確の注文の両方を入れてしまいましょう。
そして、あとはどちらかに決済されるのを待ちます。チャートを見ると損切りラインをずらしたくなるので、チャートはできるだけ見ないようにしましょう。
投資家心理まとめ
チャートは読めてるし相場観もあってるはずなのに勝てない・・・。それは、ここで紹介した投資家心理の罠にハマっているかもしれません。
ここから抜け出すには、自分の内側に認知バイアスがあることを受け入れ、「あ、ひょっとしたら罠にハマってる?」と客観的に自分を見つめる必要があります。
この気づきを何回も繰り返しているうちにバイアスの沼にハマることが減っていきます。
それが普通になると、あなたも大衆心理と逆の行動をとれるようになり、今までチャートの予想外だった動きが、予想通りの動きになってくると思います。
あなたがもし環境認識ができているなら、あとはこの認知バイアスの克服だけかもしれません。
少しでも問題解決の一助になってくれたらうれしいです。
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